忘れない

友の訃報を伝えてくれたお姉さんに電話を掛けた。一度連絡しようと思いながら彼女の最期を尋ねる心積りができなかった。

何を聞いても泣いてしまいそうで、お姉さんの悲しみを深めることになりそうで、コロナ騒ぎをいい事になにもしなかった。

8月になってお盆が近づいてきた。彼女を迎えてあげようと思った。

思い切ってダイヤルをして、答えてくださった声は彼女ととてもよく似ていた。

急な発病と進行、コロナのせいでお見舞いもままならなかったそうだ。ひとりで病気と闘っていた、いつも前向きな彼女が車椅子で病棟の「エレベーターの扉の前で次に扉が開いたら姉に会えると思って待っていた」と聞いた時は胸が潰れそうだった。

早すぎる、急すぎる、悔しい、もっともっと一緒に歳を重ねていきたかった。

あなたを思い出すとき、あなたがそばにいるように感じる時がある。

些細な会話も忘れない。思い出は大切に胸にたたみ込んで次に会える時までもっている。